Last Updated on 2025年6月24日 by 成田滋
かのイギリスの政治家、ディズレリー(Benjamin Disraeli)が語った言葉があります。「ウソには3種類がある。ウソ、みえすいたウソ、そして統計だ。」誠に含蓄のある言葉です。ディズレリーは、自由党のウィリアム・グラッドストン(William Gladstone)と並んでヴィクトリア朝の政党政治を代表する人物で、また小説家としても活躍したといわれています。ディズレリーは統計によって人を騙す方法を知っていたようです。自由党は別名ホイッグ党(Whig Party)といわれ、議会による王権制限を主張する反王党派の政党です。
最近は、「トレンド」とか「流行」といった言葉をしばしば見聞きします。一体誰が、このような言葉を広めるかです。社会の裏には、消費者を惑わすというか、拐かすような人々がいるのです。「相関関係」とか「平均」、そしてグラフを使って、「トレンド」を意図的に作りだすことができるのです。今や、統計は読み書きの能力と同じように重要になっています。
ディズレリーのように我が国の総理大臣が賢い政治家であるかはわ分かりませんが、彼は先日、「日本の財政状況は間違いなく極めてよろしくない。ギリシャよりもよろしくない状況だ。税収は増えているが、社会保障費も増えている。減税して財源を国債で賄うとの考えには賛同できない。」と国会で答弁しました。総理大臣が国民を騙す方法を知っていたかどうかはわかりません。おそらく財務省の官僚からレクを受けて答弁したようです。
総理大臣は、政府の純債務残高と国内総生産(GDP)を割合を使うと、債務残高はGDPの2倍を超えており、主要先進国の中で最も高い水準にあるという統計を使って発言したのです。他方で、対外純資産をみると世界で二番目となっている事実を忘れてならないのです。日本は世界最大の債権国でもあります。このように純債務残高を分子とし分母をなににするかによって、債務残高の比率は違ってくるのです。このような見方を一国の総理が知らぬはずがありません。もし知らないとすれば、総理大臣としては失格で退場です。あるいはもしかして、ディズレリーのように「ウソをつくには統計を使う」ことを財務省から入れ知恵をされていたのでしょう。国民はウソに騙されてはなりません。
